切ない青春の1ページ。

人間、好きな人の前に行くと、何もしゃべれないし動悸はするし、本当にむねが痛くなるんです。

結局初恋の君とは3年間別のクラスでしたし、ほとんど話をすることが出来ずに終わってしまいました。

いやいやいや、そうではないんです。なんとか同じ中学出身の女子、また、彼女と仲の良い女子を探して頭を下げて情報を集めたり、なにが好きなのか、色々と、特には彼氏がいるかどうかなども努力して収集しましたが、結局片思いの状況はかわりません。

なぜなのか。他の女子とは楽しく話が出来るのに、女バスの他の女子とは冗談を言い合っているのに、彼女が通ったら、ぜんぜんだめなんです。身体が硬直しちゃって、頭の中が真っ白、なにをしゃべっているのか、もわからなくなってしまいます。

高2の秋、ついにその日が来ました。

修学旅行です。あの中学の時の思い出の京都です。しかも今回はクラスは違えど同じ学校、同じ電車、同じバス、ホテルも同じ、いっぱいいっぱいチャンスがあるんです。

2日目の午後、自由行動の時間、クラスの女子たちが彼女と京都タワーで待ち合わせを勝手に強引にセッティングしてくれたのです。

(新幹線の行きも帰りも、はげまされ、慰められて)

 

午後5時、京都タワーの展望室の片隅に待っていたら、玲子さんがやってきました。友人達サクラが隠れてびっしりいる中、アーダメだ。しゃべれない。

と彼女は私の真ん前に座り、淡々と言いました。明るくもなく暗くもなく、淡々とどす。

「私は松山君のこと友達だとは思っていますが男性としては意識していません。だからお付き合いは出来ません。でも他に好きな人がいるわけでもないです。気になったらごめんなさい。

これからも同じバスケの仲間として友達として気軽に話しかけてくれると嬉しいです。」

‥‥‥。

そこにいろんなところで見ていたクラスメイトの野次馬たちがやっぱり、やっぱりのオンパレードでした。

当然の結果だから私を除いてみんな明るくて楽しそうです。ひとの不幸は蜜の味。です。

高校の修学旅行は京都だったのですが、何一つ覚えていないんですね。

ただ行きも帰りもずっとはげまされ慰められていた記憶だけが残っているんです。

 

ちょっと切ない青春の1ページでした。